
Paul Delvaux “Le Viaduc”
『・・・と関わっていると、マジョリティというのは何かしら信念がある集団ではないのだと感じる。マジョリティ側に生まれ落ちたゆえ自分自身と向き合う機会は少なく、ただ自分がマジョリティであるということが唯一のアイデンティティとなる。そう考えると、特に信念がない人ほど “自分が正しいと思う形に他人を正そうとする行為” に行き着くというのは、むしろ自然の摂理なのかもしれない。
オフィスの入ったビルを出ると、強張っていた身体から余計な力が抜けていった。青物横丁にある本社から打ち合わせ場所の工場までは、電車を乗り継いで四十分と少し。その間は一人でいられる。そう思うと佳道の心身は幾らか軽くなる。』
『正欲』 (朝井リョウ)
