About Knitwear.

ウールのニットウェアについて、あれこれとお話ししてみようと思います。

数年来、やや苦戦気味の状態だった冬のウールニットですが、昨冬に復活の兆しが現れました。なんとなく 『ニットよりスウェット』 という風潮が強まっていたような気がしますが、一周して、やっぱりニットの方が暖かいかも、となったのであろうと推測しています。そんな単純な話かは分かりませんが、えてしてそういうものです。

そんなことで、今季は昨季よりもニットの仕入を増やしたのですが、真冬の盛りを迎えたここまで、正しい判断だったという結果になっているように思います。

 

ニットを敬遠する人に、ケアが面倒だという声が多いです。スウェットは気にせず洗濯機で丸洗いできるのに対し、ニットはドライクリーニング、もしくは水洗いするなら充分な配慮を要します。たしかに、それは間違いありません。

数か月前、ヤホウニュースのトピックに、ニットの洗濯についてのコラムが上がっていたことがあり、コメントも含めてありがたく拝読させていただきました。本記事自体はニットの洗濯方法に関することで、目新しいことはなかったのですが、けっこうな件数で書き込まれていたコメントが興味深ったです。

『私は着る度に洗う』
『5回くらい着たら洗う』
『シーズン終わるまで洗わない』
『上から目線ですね』
『自慢ですか』

いろいろなコメントが偏ることなくあった印象で、けっこう感覚はバラバラなんだなと思いました。
では正解はどれ?とお思いかもしれませんが、これは個人の衛生観念に関する話なので、正解・不正解という話でもありません。

正解はそれぞれということを前提に、僕の考えをお話しすると、『ニットは洗濯が面倒な服』 ではなく、『洗濯が最低限でいい服』 という解釈に変えるのがいいと思っています。もっと言ってしまえば、『洗う必要がない』 という感覚です。

僕自身は、ニットの洗濯はシーズン終了後の1度です。4月くらいでしょうか、シーズンの入れ替えをするタイミングで、自宅で水洗いをしてしまい込みます。一度に全てできないため数回に分けてやりますが、たしかに一般の洗濯に比べれば面倒であることは間違いありません。ですが、そこは着る度の洗濯がないわけですから、仕方ないと思えます。

 

コットンの生地と言うのは、繊維が細かくて柔らかいために、糸はある程度ギュッと詰まり、織りもまたしかりです。ですから、汚れや雑菌が生地の中に滞留しやすいために、水で洗い流したいという感覚になります。
一方で、ウールの繊維は硬くて粗いために、糸の状態でも空間ができます(これが暖かさの要因です)ので、汚れや雑菌が生地の中に滞留しにくいという特性があります。まったく汚れないということではないので、時々陽に当てる、風を通す、スチームを当てる、などは必要ではありますが、不精な僕はそれさえも怠りがちです。衛生意識が高い人からしたら、君、それは不潔だね、と思われてしまうかもしれませんが、僕からしたら、ウールニットを小まめに洗うなんてもったいない、という感覚です。

ここで別の角度から見てみましょう。服好きの観点に視点を変えると、『服というのは洗うことで消耗していく』 というのが基本原理であることも忘れてはいけません。洗濯というのは、水や洗剤と触れ、グリングリンの脱水があり、時に紫外線にさらされますから、回数を重ねるほどに繊維は落ち、つまり生地は痩せ、色褪せなども生じてしまうものです。消耗・イコール・すべて味わい、ということでもなく、エイジングが美とされるものの方が限られているのが現実です。

ここで弁護側が逆転です。
傍聴席は静まり返り、わたくしはニヤリ。

洗濯する回数が多ければ多いほど消耗していくのは自然の摂理ですから、洗濯の回数が少ないウールニットの寿命たるや、推して知るべし!
『あまり洗わなくて済む』 というのはそういう意味合いで言っていたのです。

(傍聴席)
そうか、ニットの方があたたかくて、長持ちするのか!
ウールってなんて素晴らしいんだ!
俺は騙されていたのか!

 

みなさん、静粛にお願いします。

ここで相手側弁護士はこう言います。
ウールニットは毛玉ができるじゃないか、シーズン外の保管で防虫剤が必要じゃないか、と。

わたくしは微笑みながらこう言います。
その通りです、と。

つまりはウールニットがスウェットより優れているということを言いたいのではなく、あくまでも、それぞれの特性であり、ウールのニットがただ面倒なものというイメージだけを払しょくしたいのであります。ニットにはニットの、スウェットにはスウェットの特性があり、それぞれ得意・不得意があるということです。

 

服飾の観点から言えば、どうしたってニットの方がスウェットよりも見栄えはします。ニットには、クラシック、トラディショナルというヨーロピアンなルーツを感じ、対してスウェットにはイージー、スポーティ、ストリート、などといったアメリカンなキーワードが浮かびます。
時と場合と気分により使い分けるべし、ということを、服屋の立場では主張しなくてはならないでしょう。

 

そんなことで、数は減らしているものの、まだウールニットはぼちぼち在庫がありますので、何かの参考になることもあろうと思い、目についたものをちょっとだけ着てみました。

伝統的なヨーロッパのニットは、イギリスを中心にさまざまなルーツや特性があって面白く、欧米に比べると後発にはなるものの、ジャパニーズニットも負けていません。

ハンティングやフィッシングなどのアウトドアをルーツにするニットウェア、漁師さんが船上で着るニットウェア、学生が着るユニフォーム的なニットウェア、ミリタリーのニットウェア、等々、いろいろなタイプが存在しますし、デザインについても、ニットならではの編み柄や色使い、ニット地ならではの発色があり、見え方、着こなし方もさまざまでしょう。

 

それから最後に実際の洗濯についてです。ニットの洗濯方法と検索すればいくらでも出てくると思いますが、基本的にはウール用と謳われている中性洗剤で、ネットに入れて、弱流水で、最低限の脱水時間で、干し方に気をつけて、という感じです。
手洗いをする場合は、あくまでも軽く、やさしく、押し洗いです。一番やってはいけないのは、ゴシゴシです。ゴシゴシ擦ると毛糸が詰まっていって戻らなくなり、これがいわゆる一番恐れられている洗濯の縮みになります。逆にこれさえやらなければ、そうそう縮んでしまうこともありません。
はじめは緊張しますが、慣れてくればなんともないですし、干し方なども自分なりの方法ができてくるのかなと思います。

 

ということで、長々と失礼しました。慣れ慣れな人も多いですが、心配していたり、敬遠していた方々に響けば嬉しいです。冬にニットを楽しまないのは、冬に鍋をつつかないくらい損です。

(傍聴席)
そんなに損なのか?
おいおい、ありえないだろう!
ザワザワ・・・

そろそろ来秋冬シーズンの仕込みもはじまりましたので、また魅力的なウールニットを集めてきたいと思います。まずは今季の魅力的なニットを残らず平らげていただけると、さらに来冬の品揃えがパワーアップしますので、どうか宜しくお願いいたします。

(傍聴席)
今季2着買ったぞ!
おいおい、何着買わせるんだ!
ここの店主は鬼か!

 

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