No Title.

こんにちは、Fuzz 松崎です。
関東地方も梅雨入りし、木々の緑も徐々に濃くなってきた今日この頃、この週末は真夏を思わせる暑さですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

まだまだ夏もの新作のご紹介は続くのですが、そろそろ脱線ブログもよかろうと思い立ちまして、何かないかなと考えてみました。
最近、本線とは関係ない何かの話題が乏しくて、実はもっとずっと前から、『ムダ話ができていないな』 とスランプに陥っていました。いや、無理するなよ、求めてないぜ、という声があるのは重々承知しておりますが、個人店の味わいみたいなことは必要であろう、また、意味のない軽い話題によって、意味のある本線の話題がより意味の重いものになるのではないか、と信じているのです。

そんなわけで、無理くり絞り出した話題が、数年ぶりとなる読書ネタ。比較的読書好きなわたくしは、大量ではありませんが、コンスタントに本を読んでいますので、ここ最近読んだものの中で、おすすめできそうなものをいくつかピックアップしようと考えました。

 


 

『銀河鉄道の父』 門井慶喜

少し前の直木賞受賞作で、最近映画化がされ、つまり間違いない作品。
宮沢賢治の父親が主人公のお話で、父から子への不器用で深い愛情が淡々と描かれ、最終的には胸をえぐられます。
子の立場で考えれば父親に思いを馳せることになりますし、父親の立場で考えれば、確かな共感と、あとは反省とがあるような気がします。
後半のどこかの場面で、自然と涙がポタポタきてしまい、一旦本を閉じて深く息を吐きました。意外とこれまで感じたことのないタイプの感銘だったと思います。

 

『戸村飯店青春100連発』 瀬尾まいこ

こんどは男兄弟の話で、ちょうど僕も年の近い兄がいるもので、共感の嵐でした。
男兄弟ならではの関係性が上手に描かれていて、弟から見た兄、兄から見た弟の、「親しいけど理解はできていない」という感じに膝を打ちまくりました。男女が分かり合えないのと同じ意味、つまり、「別の生き物だから」 という感覚にもしかしたら近いのかもしれません。兄弟の場合、近すぎて、理解している・されているの錯覚もすごい気がします。不意に理解できない愛情が降ってきたりして、おまえ何を考えているの?みたいな。

しかしこれを女性が書いているのが不思議です。思えば同じように男兄弟を描いた映画 『ゆれる』 も大好きなのですが、これも原作から監督まで女性でした。ある才能を持った女性は、男兄弟のことはすべてお見通しなのかもしれません。
この作品で著者が好きになり、わたし的レギュラーメンバーに加わりました。瀬尾まいこ作品はランダムなローテーションで定期的に読むことになっています。

 

『95』 早見和真

わたし的レギュラーメンバーの、ここ数年エース級の早見和真。年も近いし、感覚も近いと感じていて、定期的に読んでいる作家さんです。
この作品は1995年の渋谷を舞台にした物語であるため、青春ドンズバ世代にはたまらない舞台設定となっています。他の早見作品と比べるとエンタメ要素が強めで分かりやすく面白いのですが、実際には他にもっと好きな作品がいくつかあったりします。ただ、この舞台設定にズバリな方々は周辺に多いと思いますので、やはりそういう意味でおすすめです。『渋谷のファイヤー通りを抜けて、トラ・コンやバックドロップで服を買って…』 といった描写があったりすれば、自然と胸がざわついてしまいます。

話の本筋は、当時の渋谷のチーム(イントネーションに注意)がどうのこうのという話で、なるほど、そういう感じになっていたんだ、というのもあり、純粋に物語としても面白かったです。

 

『明るい夜に出かけて』 佐藤多佳子

主人公は深夜ラジオのヘビーリスナーで才能あるハガキ職人。いろいろとあって心を閉ざすことにして、自らあえて世界を狭くして、リハビリのような生活に入ります。その狭い世界でも、ちゃんと人と人は出会い、自然と関係性ができて、また新しい縁を呼び込んで、というような話です。
やっぱり世の中いろいろな人がいるなと、親しくならないとその人のことなんて分からないよな、とか、当たり前のことを思いました。
じんわり染みる、いいお話です。

 

『日本人のための第一次世界大戦史』 板谷敏彦

何かで知って、ずっと積んであったのをようやく本。しかし読めば面白い。自分的には、世界認識のため、というジャンルです。
大学入試の選択が日本史だったこともあり、けっこう基本的な知識が薄い状態だったので、とても有意義でした。

近代ヨーロッパ史の基本のキになる部分であり、この政治的社会的背景を踏まえて、新しいカルチャーが生まれ、拡がりという次の段階の理解へ進めるというものでしょう。
とにかく、現代へと通じる流れの源流みたいなところだと思いますし、この近辺の時代は総じて熱量がすごいわけですから、自然面白い時代という位置付けになるのだと思います。
現代のヨーロッパ社会への理解には欠かせない部分でもあると思いました。

 

『パイド・パイパー』 ネビル・シュート

第二次世界大戦下、フランス。イギリスの老紳士が、たくさんの子どもを引き連れ、なんとかイギリスに帰ろうとするお話。すごく好きなタイプの小説です。
イギリス老紳士のジェントルマンシップを軸にして、第二次世界大戦下のヨーロッパのリアルな風景を舞台にして話が進みます。主人公のハワードさんを応援しつつ、無邪気な子どもたちにハラハラしつつ、気が付けばスリリングなクライマックスに突入している、という見事な展開。
実際にほとんどこの戦争中に執筆された作品のようなので、本当にこうだったのだなと認識して読むことができます。ダンケルクの撤退がフランスの人たちにどれほど衝撃的なことだったのか、占領兵のドイツ軍人がどういう感じで振る舞っていたのかとか、これがリアルなんだなと思えるのです。

フランスの海沿いの町をまず目指して、そこから船でイギリスに渡ることをイメージして一行は進むのですが、要所をドイツ軍に占領されてしまい、なかなか思い通りの道を進めずに苦労します。まず目指したのがブルターニュの漁港サンマローだったのですが、どこかで聞いたぞと思ったら、先日ご紹介した RELATIONS DE VOYAGES が生まれた土地でした。

 

『オイディプス王・アンティゴネ』 ソポクレス

いずれ演劇を観てみたいと思っているお話で、自分的には、教養のため、というジャンル。
紀元前のギリシアの戯曲ですが、内容がしっかりおもしろいから素晴らしい。軽く2000年以上前でも、人間はそうそう変わらないというか、こういうお話を面白がっていたのかという意味でも面白いと感じます。

『オイディプス王』は、運命に翻弄された王の悲劇の物語。
『アンティゴネ』は、オイディプス王を失った後の続きのお話で、人の正義とは何ぞやというのがテーマに据えられつつ、結局、結末は取り返しのつかない悲劇で幕を閉じるという物語。
アンティゴネの話は、人間としての正義と国家としての正義が違ってしまった挙句、このような悲劇が起こるのだ、という感じですが、これは現代に置き換えると、人間としての正義と会社などの組織の正義が相反してしまった場合…、やはり悲劇が起こるのだ、となる気がします。
わたしの正義は公開である、組織の正義は隠ぺいである。わたしの正義を押し殺すことで、組織の多くの人が安泰でいられるとしたら。

 


 

このくらいにしておきましょう。
やっぱり面白かったものの話はスラスラ書けるので、話題に困ったらこれだなと思いました。
もっと映画の話や音楽の話なども書ければいいのですが、、、それは今度、誰かにお願いしてみようかなと今思いつきました。
本なら僕でなくてもあの人とあの人がいるし、映画ならあの人がすごい観てるし、写真ならあの人がいるし、神宮球場にはあの人が行っているし、音楽のライブならあの人、47都道府県をすべて旅したあの人、、

いよいよネタが尽きたわたくしの次なる手は、著作権フリーな趣味人を狙います。僕でなくても、よく買い物をしていただいている人ならば、Fuzz らしさは担保されるはず。

ということで、ムダ話ブログでした。
気温と湿度が上がってきましたので、革靴や冬服の保管状況を一度見直しておきましょう、と最後に有益そうな内容をねじ込んで終わります!

 


 

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次の週末24日土曜日、営業時間に変更がございます。
たいへん恐縮ですが、ご来店の際にはご注意賜りますよう宜しくお願いいたします。

 

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