No Title.

今朝、出勤してポストを開けてみると、見慣れない郵便物が。
差出人は Merz b.Schwanen、中身はチョコレートでした。ドイツからの国際郵便で、ご挨拶の板チョコ。初めてだったのでちょっと驚きました。

さて、今日あたりはすっかりクリスマスですね。今年もほんの少数ではありますが、クリスマスプレゼントのために女性のお客さまがご来店いただき、プレゼント選びを手伝わせていただきました。
お相手に贈ろうとして選んだものは、やっぱりご自身が好きなものを選ぶために、どうしても自分も欲しいと思ってしまう、というのは考えたら自然な話です。頭の中でそこと闘っている女性陣の姿が印象的で、微笑ましくもありました。

 

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さて、年内の新作入荷も終わり、僕の方ものんびりペースになっています。この流れも例年通りで、このブログで急いでお伝えしなくてはいけないということは無くなっていて、何か別口の内容で書こうかなと思っている間に、やはり時期的にお客さんのご来店はそれなりにあり、加えてメーカーの営業さんが年末の挨拶に来てくれたりして、暇になるわけでもなく、なんとなくいい感じで過ごせております。今は、展示会に行って発注して、がなく、納品があって写真撮影と商品アップに追われる、もない、という意味でのんびりペースなのです。あとは何事もなく、平穏無事に年の瀬が迎えられるよう願うばかり、という具合です。

このような今の状況でお客さん来るんですね、と思われるかもしれませんが、もちろん今時期としては例年よりは少ないです。ですが、新宿の人出はなかなかのもので、なんというか、みんな落ち着いているなという印象です。外出を控えていただきたいのは一部の傾奇者たちのみなさんで、傾奇者さえ周りに居なければ、それほど不安に感じる必要はないというのが、ある程度の共通認識なのではないかと思います。

 

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話は変わり、今日の本題なのですが、BASISBROEK と Flamand についてのお話を少々。
店頭でも機会があると話しているのですが、この両ブランドが、一旦このシーズンで終了になります。

代理店が変わるということでなく、ブランド運営が停止となります。どちらもベルギー生産にこだわったファクトリーブランドですが、これを一手に動かしていた商社の人が社を離れるために運営不可能になり、という大人の事情です。
この両ブランドは Fuzz ではずいぶん長い付き合いになっていて、特に Flamand は Pyjama Clothing 時代から春夏のカットソー陣の一番手を任せていて扱い量も多く、この話を聞いた時は足元がふらつきました。

どんなことにも永遠なんてありません。時代は変わっていくものです。僕としては、この空いてしまった穴を埋めるために尽力するしかなく、しかしそれはそうそう頻繁にはないような、お店の変化の機会になるわけですから、それはそれでまた楽しみにしていただきたいと思っている次第です。

そして、この話があって、その後です。つい先日ですが、『BASISBROEK は甦らせます』 というお話がありました。ベルギーの工場を動かせる人が離れてしまったのがブランド停止の一番の理由ですが、日本でつくりましょう、ということになったようです。
そもそもが 『ベルギーメイドなくしてバージスはありうるのか?』 というのが一番のネックだったようですが、そこから解放されることにしたという結論なのでしょう。長年扱ってきた僕の印象では、BASISBROEK はある時からコレクションを大きくして、はっきりデザイン性を前面に出し始めたと思っているので、もはやベルギーメイドというのは一番のブランドアイデンティティではないと思っています。ですからジャパンメイドに変わっても、まったく問題はないだろうと思います。長年見てきた人にとっては、そのある時を一線として、それ以前、それ以後、という風に見ているのではないかと思います。『それ以前』 が好きだった人もいれば、『それ以後』 になってから好きになった人もいて、もちろんずっと好きという人もいて。

復活は1シーズンおいて、次の21年秋冬になるそうです。ベルギーの工場だからできたことも多いでしょうし、逆に日本の工場だからできるということもあるでしょう。扱いの会社は変わりませんが、ディレクションをする人間は変わるので、内容的にも何かしらの変化はあると思います。Fuzz での取り扱いを継続するかどうかは、実際に展示会でものを見てから判断することにしますが、安心した、楽しみだ、という感想ではあります。

 

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そんなこんな、いろいろあって、これは常に考えていることではあるのですが、お店全体のラインナップの見直しを、こういう機会に乗じて少しずつでもやっていこうかなという気になっています。
ずっと同じものを自信を持って販売し続けられたらそれは幸せですが、でもそれはセレクトショップを自称するお店が理想とするのは無理があります。こんな状況になって、すごくベースの部分での価値観に変動が起こりつつあるわけですから、やはり時代に合わせた変化というものは必要ではないだろうかと、ここのところ難しい顔をして考えています。

まあまあ、こういうことを考えるのもこの時期ならではで、年が明けて、しばらくして展示会シーズンになると、頭の中からすっ飛んでしまうのですが、、。

 

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最後に、先日お伝えしましたが、年末年始の営業日程を改めて。
年末年始の休業期間は30日から2日まで、4連休です。年内最終営業日は29日(火)で、この日が通販の出荷最終日となります。昼12時までのご注文は29日のうちに発送できますが、以降は年明けの発送とさせていただきます。
年明けは3日から、翌4日は月曜ですが営業することにしました。

12月26日(土) 12:00 – 20:00
12月27日(日) 12:00 – 20:00
12月28日(月) 定休日
12月29日(火) 12:00 – 20:00
12月30日(水) 休業
12月31日(木) 休業
1月1日(金) 休業
1月2日(土) 休業
1月3日(日)  12:00 – 19:00
1月4日(月) 12:00 – 19:00
以降、通常営業

通販に関しては、最終出荷は29日となります。この日の12時までに頂いたご注文までを年内の発送、以降は明けて3日の発送とさせていただきます。

ということで、年内も残りわずか。最後まで宜しくお願いいたします!

 

CM – SANDERS “Cap Toe Chelsea Boots”.

かなりの年数履きこんだ私物となります、SANDERS のチェルシーブーツ。秋冬ごとに何年も履いていますが、これは飽きないです。

実際、細身のスマートなコーディネイトをされる層からも、ワイドめのパンツでカジュアルなコーディネイトをされる層からも、幅広い支持を得ていて、ここ数年は続けてご用意しています。

ここまで履きこむと、ちょっとラフな軍パンと合わせてもしっくりくるし、もはや怖いものは無いです。ドレス靴然としたチェルシーはスマート族のためだけのものかもしれませんが、ミリタリーコレクションという最終的な味付け、具体的にはポリッシュレザーでレーンステッチの入ったキャップトゥという部分なのですが、それがすごく利いています。

やはり秋冬ならではの楽しみ、革のブーツをたしなんでいただけたらと願う次第。シンプルな男らしい格好よさ、というものはコアとして大事にしていきたいものです。

 

SANDERS – Cap Toe Chelsea Boots
col : Black
size : 6 – 8
price : 52,000 (+tax)

 

Trying on.

FUJITO – Exprolar Pants
ミディアムな太さでほとんどテーパードが無く、ストレートに近いシルエット。シルク混のデニムはインディゴカラーをひと際上品に見せてくれます。
ストンとまっすぐ落ちる美しさとひと味違うデニムの美しさ。一見わかりにくい魅力ですが、ありきたりではない品のあるコーディネイトが実現するはずです。
(size 30 を着用)

 

Ordinary fits – Yard Trouser *Top Denim
中太のストレートシルエットが特徴。ワークがベースのトラウザーということで、カジュアルに何にでも合わせていけます。モノトーンのデニム生地は、タフながらもどことなくクリーンな印象で、ラフなスタイルからきれいめのコーディネイトまで、幅広くこなせる万能さがあります。
(size 30 を着用)

 

FRANCE Military – F-1 Cargo Pant (Dead Stock/ Vintage)
フランスのミリタリーパンツ、デッドストック。ブーツにインするために裾にゴムが入った仕様になっていて、ほどよくバランスの好いフォルムを形成しています。オリーブ色とカーゴポケットでいかにも軍パンな雰囲気はありつつも、このテーパードシルエットによって、きれいな軍パンスタイルでまとめられることが魅力です。
軍パンをさりげなく穿く格好よさは男たるものいつでも気になるところではないでしょうか。

 

着用モデルの村田(や) さんは、170cm/60kg 前後の平均的な体格です。Ordinary fits のパンツを買いに来て、ついつい軍パンもいっちゃった系20代男性。さらにこの写真を見て、 FUJITO も欲しくなってしまっていないか私は心配しているところです。

 

Go Deep.

What is FASHION ?

ファッションって何だろう?
お洒落って何だろう?

普通に生活しているのなら、あえて向き合う必要のない問い。いや、これに向き合いながらお洒落に励むとしたら、実はもうお洒落ではないかもしれない。なぜ、人は着飾るのか、どうして俺は洋服や持ちものにお金をかけるのか、誰にどう見られたいのか、単なる娯楽の一つとして自分独りが満たされるのか、、、

こんな恐ろしい問いに、あなたは向き合うべきではない。

 

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ただ、それを生業としている者としては、立場上、それなりに考えていかなければいけない、けど、考えるのは考えるにしても、語るにはヤマがでかすぎるし、むしろ語ることはタブーなのかもしれないとさえ思う。

個人の心理的な側面、個人と集団という社会的な側面、また、ビジネスとしての側面、、、
すべてを網羅して語り尽くすことは、とうてい無理な話でしょう。

 

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ある時、店頭で長いお付き合いになっているお客さん数名の方に訊きました。
『お洒落とは何ですか?』

これは、『あえて漠然としたかたちで訊きますが』 というフレーズを添えて、きわめてシンプルな問いを個人的に解釈して答えてもらいました。

 

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『お洒落とは何ですか?』

答えその1
それを答えること自体、恥ずかしいですね。お洒落とは、語るもんじゃない、というのがまずある。

答えその2
TPOでしょう。季節や土地、場所や立場を考えて、ふさわしい装いができるか。どんなにいいものを着るかというよりは、どの街で誰と会うからこういう感じに着る、とかを考えるのが楽しいです。

答えその3
僕にとってお洒落とは、”憧れ” かもしれないですね。映画を観たり、街を歩いていたりする時に、格好いいなと思える人を見て、憧れのような感情が湧いた時に、お洒落ごころが自然と発動します。

答えその4
お洒落とは、人が周囲の人に向かって、自分の好みを主張し、なんとかかんとか、、、という行為である、こんな感じっすかね?

答えその5
僕にとっては、すごく特別なことで、大切にしていることです。ただ、どう特別か、どう大切かというのは、ちょっとうまく話せないですね。

答えその6
なんなんでしょうね。

 

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質問には、『誰にとって』 という枕もつけていないですし、『お洒落』 が概念なのか、行為なのかも規定しないですから、受け止め方はそれぞれ。自分のこととして答えてくれたり、どういう人がお洒落なのかを説明したり、一般論として明らかにしようと試みてくれたり。

正解があるものと考えて、それを探すのも面白い。
自分なりの答えをゼロからつくるのも面白い。

 

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好きなものを身に付けることだけでいい、俺にとってのお洒落は、あえてそこまで。だからさ、俺ってお洒落な人ではないんだよね。でもさ、楽しければいいんじゃない?

間違いないものを身に着けたいですね。しかるべき素材で、しかるべき技術でつくられた、確かなクオリティのもの。そういうものを身に付けると、自然と身が引き締まるような気がします。それが僕のお洒落です。

高価なものを身に付けている人がお洒落? 僕は違うと思いますよ。やはりその人らしさが表れていて、他の人には無い魅力を感じさせる人がお洒落なんだと思いますよ。

やっぱりトレンドですね。”今” の空気をしっかり感じられているかどうかが大切です。先端にいる感覚って、とても気持ちがいいものなんです。

お洒落というものを意識しなくなってから、ようやくお洒落になれるのかもしれないね。肩肘張らず、自然な姿が一番格好良くなるのが人間の理想でしょう。

 

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ニューヨークでファッションスナップを何十年も撮り続けたビル・カニンガムはこう言います。

Fashion is the armor to survive the reality of everyday life.
「ファッションは鎧なんだ、日々を生き抜くための。」

 

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例えば、自分のことを弱いと感じているのかもしれない。自分に自信が持てないから、しっかりと着飾って、心を強くしたいと思っているのかもしれない。

例えば、人と話すことが苦手で、自己表現があまり上手くないとしたら、お洒落に傾倒するのかもしれない。自分はこういうものが好きで、こう見られたいんだと、ほとんどの場合が無意識なのだろうけど、バランスをとるように、言葉ではなくファッションで自己表現を実現していくのかもしれない。

例えば、自分には認めてもらえるような魅力がないから、他の人が決してしない格好をしてやろうと考えるのかもしれない。おれはおまえらとは違うんだ、おれはありきたりの人間ではないんだ。

もしかしたら、お洒落とは、弱さを隠すもの?

 

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『若いうちは、もしかしたらそういう側面が強かったかもしれないね。わたしはその時期を通り過ぎて、もはや自分の好きなもの、自分と相性のいいものしか身に着けなくなってしまったのだけど、かえってファッションの奥深さを知ったよ。
わたしたちの年代のお洒落はさ、どんなふうに自らの幸福が染み出すか、みたいなことなんだろうねぇ』

 

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『ファッションとは、お洒落とは』 ということに、正面からまともに向き合うべきではない。なぜなら、お洒落とは、感性を使うものだからだ。
頭を使いすぎたら、五感は鈍る。五感を駆使しないお洒落は、正しさは感じられても、面白さが不足してしまうのではないか。

しかし、面白さが不足するとして、それもまたその人、となるのがファッション。やはりどんなかたちであれ、その人らしさは表れてしまうのかもしれません。

 

汝、恐れるなかれ、
装いを楽しむ先にこそ光明あり。

 

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やはり、語り尽くすことあたわず。語れば語るほどに、混沌を為すばかり。

ですが、我ながら果敢なチャレンジだったと思います。
またいずれ機会があれば…